PamGau
Web周り、サッカーの話、ときどきヌコ

初夏の邂逅 (最終場)

前回の続き=

通された部屋は比較的こぢんまりとしていて、講義室というよりは会議室といったところでした。いわゆる「ゼミ部屋」なんていうのもこんな感じなのでしょう。

その部屋には、折りたたみできる長テーブルを縦に長く並べた列が3つと、各列両側にはテーブルを挟んで向かいあうような向きにパイプ椅子が並んでいます。列と列との間で背中合わせになったパイプ椅子の間隔は狭く、通りづらそうでした。

既に椅子の六割方は埋まっており、座っている人たちは、私同様、連れがいないせいで所在なさげに見えました。一方、友人同士連れ立って参加しているような人たちは、概ね女性であって、部屋の隅で立ち話している姿が目に付きました。

私は入り口に一番近い列の最後尾の席に案内されました。バスを降りてからさほど時間が経ったわけでも無いのですが、わけのわからないことばかり続いたので、椅子に座ったとたんに思わず「ほぅーっ」とため息が出ました。

さて、この部屋の中に件の先輩を探してみたのですが、やはり見当たりません。ここまで誘っておいて、ほったらかしは酷いものだと少々腹立たしくもなりつつも、あの大教室の状況ではフォローも難しいかなとも思い直しました。あの人のことはまた後でも探せるものとすっかり割り切ってしまいました。

それよりも興味深かったのがこの部屋での席割りでした。両隣は必ず異性ですし、テーブルを挟んだ真向かいにも異性が着席するように配慮されています。こんな席割りをするのは「お見合いパーティー」や「合コン」しかありません。

私は一番端なので右隣に席はありません。真向かいはまだ空席ですが、椅子の上にはバッグがぽつんと置かれているところから、部屋の隅で立ち話をしている一群の女性たちのひとりが来るものと思われます。

左隣に目を移すと、既に女性が着席しています。年齢はおよそ30半ばで化粧気のない地味な印象を受ける女性でした。黙ったままうつむき加減にしていたので顔はよく見えません。着ている服もなんだか野暮ったくて、あまり気乗りがしない様子でした。自分のことを棚に上げれば、この場がお見合いパーティーだとしたら少々場違いな感じがしないでもありません。

また、左斜め向かいには年のころなら40ちょい手前で色黒のがっちりした体格の男性がいます。さっきからずっと大声でしゃべっているのが聞こえていて、どうやら彼の右斜め前の別の男性にしきりに話しかけているようでした。彼ら同士は初対面のようで、しきりにしゃべっている内容から自分の経歴を説明していました。

切れ切れに聞こえる内容によると、若い頃に海外に留学した後、そのまま現地での生活を長く続けていたのが、3年前に故郷の岡山に戻ってシイタケ栽培を始めたとのことです。その事業も落ち着いたので、そろそろ身を固めようとこの場に参加したそうです。

「………」

やっぱり、「お見合いパーティ」でしたか…。

一体、大学の校舎を借り切って行われるようなお見合いパーティがあるのでしょうか。主催者はどういう団体で、参加している人たちはどういう伝手でこの場にやってきたのか、全然訳が分かりません。見れば、当地に住む人よりもよそからはるばるやってきた風情の人が大半です。

謎は深まるばかりですが、すぐに部屋の中に司会者と思しきスタッフが入ってきました。急に部屋の雰囲気が変わり、着席を促す指示によって、それまで部屋の隅で談笑していた女性の一群が解散したかと思うと、そのうちの一人が私の真向かいの席に近づいてきました。

年齢は30前後と見えるロングヘアに痩せ型の女性で、まるでチアリーダーが着るような、深い緑のタンクトップに同色のミニスカート、さらに同色のスパッツといった珍妙ないでたちでした。小さな目をカバーするようにアイラインが濃く引かれており、コスチュームを別にすれば、「にしおかすみこ」そのものでした。

席に近づいてくる途中で私と目が合い、一瞬戸惑った表情を見せた後、隣の岡山シイタケ男にも視線を走らせました。その直後です。甲高い声で「無理無理無理無理無理無理ぃー」と叫びながら、先ほどまで話していた友人らしき女性の所まで戻ろうとしました。哀しいことに、きびすを返す際になぜかスカートが翻り、緑のスパッツに包まれた貧しいお尻を見せながら、私から遠ざかっていくのでした。

=終わり=


このお話について

最初から最後まで私のつたない日本語の長文にお付き合いいただいた方には大変申し訳なく思います。もし、お腹立ちの方がいらっしゃったら謝ります。

すみません。

実はこの一連のお話は完全にフィクションであって、数日前に私が見た夢の内容を描写してみたものです。

私の父親は数年前に他界しておりますが、文中に出てくるようなシチュエーションの病院に入院したこともありません。そのような病院や大学も実在しませんし、奇妙な催し物も全て夢の中での出来事です。

もちろん、私はお見合いパーティーに参加したこともありません。誓って!

ただ、登場人物や建物・備品の類は夢で見た内容をほぼ忠実に再現できました。

前日に見た夢の内容を綴っていく「夢日記」はポピュラーですが、私は今までやったことがありません。そのようなものを書けるほどにまとまった内容の夢を見たことがなかったからでもあります。

ところがちょうど長文を書いてみたくもあったタイミングで、数日前にこのようなリアルな夢を見た次第です。普通は夢の中における場面展開は脈絡の無い場合が多いのですが、今般はスムーズに話が展開していったのがとても意外で、新鮮でした。

それにしてもオチが彼女とは…。

私のプロファイリングにでもお役立てください。

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